「海を抱く―BAD KIDS/村山由佳」を読んで

村山さんの小説もこれで8作品目になるが、
これまで漠然と感じていた村山作品の主題みたいなものが
自分にもおぼろげながら解ってきたような気がする。

「空虚感」とでも云うのかな、
登場人物の言葉を借りて云うと「ぽっかりと胸に空いた穴ポコ」であろうか。

本来であれば、幼年期から思春期頃までは両親をはじめ肉親によってその心の穴は満たされるべきであるのに、本人もその存在に気づかないまま大人になっていこうとした時の葛藤が二つの「BAD KIDS」に凝縮されているように思えてならない。

ある者は肉欲で埋めようとし、ある者はスポーツで、
またある者は「自分は強い男(または女)」であると無理やり信じ込み
心の穴を抱えたまま強く生きていこうと必死にもがいている。

だけど彼らはみな、心の穴の存在に気づいた時にうすうす感ずいている
――決して自分だけでは満たしきれないことを。


空虚感というキーワードは、もしかしたら他の作品も含めた共通キーワードかもしれない。
光の当て方や読者に見せている角度が異なるだけで結局は同じことを言おうとしているのかもしれない。

工藤都の語りにこんな下りがあった。
「何とかと天才は紙一重なんて言われたり、芸術家は奇矯な振る舞いをするものと決まっているみたいだけど、そんなの全然不思議じゃない。乱暴な言い方をすれば、自分の中にそういう穴ポコを抱えている人たちのうち、ある人はそれを埋める自分なりの方法を見つけて天才とか芸術家になるし、ある人は見つけられずに社会に適応できなくなる・・・・・・。そういうことなんじゃないだろうか。」(「BAD KIDS」より)

これは、村山さん自身のことではないかと思う。
――私はたまたま小説を書くという方法が見つけられたけど、それでもこんなにも苦しくてたまらない。自分なりの方法がまだ見つけられない人たちのためにも、渾身の力と愛を込めて小説を書き続ける――
この愛こそが、村山作品が多くの読者を惹きつけるパワーの根源ではなかろうか。
もちろんそれは、彼女自身が小説を書き続けられる源泉でもあるだろうけども。


海を抱く―BAD KIDS

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