「坂の途中―おいしいコーヒーのいれ方〈7〉/村山由佳」を読んで

村山さんがあとがきでも言っているように
「変化を恐れない」ことは、人生観・生き方としてもとても共感できるし
物語の進展上必要なことも十分わかる。

「だけど」とあえて言いたい、「ちょっと待って、そう急ぐなよ」と云うか、なんだか置いて行かれてしまうような気がして焦燥感みたいなものを感じずにはいられなかった。

本当は「変化を恐れない」ことは、勝利やかれんのことではなく、村山さん自身が自分に向って言っていることかもしれないけれど。

執筆時に葛藤の真っ只中にあって、その時村山さんが格闘していたときの心の動きや状態が作品をとおして透けて見えてしまったような気がしたのは、単なる僕の思い上がりだろうか。

たぶん今ではちゃんと消化してるんだろうけど、相当当時は辛かったんだろうな。勝手に決め付けちゃているけど、そんな気がしてならない。


「遠い背中」の感想でかれんの出演も言葉も最近少ないと書いたら、案の定「坂の途中」ではたくさん登場して、たくさん語ってくれた。
いっぱい悩んで、いっぱいもがいて自分の道を探すことはとても大切だし必要なことだけれど、せっかく「大切な人」が近くにいるのに、あえて自分から距離をとるのはどうかと思ってしまう。
人間って理性でもって心も体もきちんとコントロールできるなんてとても思えないから。
相手に寄りかかるつもりは毛頭なくても、体温を感じられる距離にいることは実際的な問題として――恋愛のファクターとしても――とても重要じゃないかな。
だから勝利が花村の家を出るときもそうだし、かれんが鴨川で介護の勉強をしようとしていることも、頭では分かっていてもやっぱり「僕ではこの選択肢は選べそうもない」と思った。

理屈じゃない、たぶん理屈じゃないと思う。
せっかく互いの体温を感じることが出来る距離にいるんだから、離れちゃいけないよ、絶対に。


Special Editionもこれで三つ目だけど、それぞれ味があっていいね。それぞれの登場人物の目を通して絶えず物語を見ているから、こんなことも村山さんには出来てしまうんだね、凄いなあ。
個人的には、星野りつ子編が今のところ一番好きです。
と言うか、登場人物の中で僕が一番Sympathyを感じるていのは間違いなく彼女だと思う。
もちろん勝利の一人称で物語りは進行しているので、勝利に感情移入して読み進めているんだけど、「僕が勝利の立場だったら、星野りつ子を選んでしまうかな」と結構真剣に考えてしまう。
「自分が必要としている人」よりも「自分を必要としている人」のそばにいてあげたい、いなければならないという気持ちのほうが今の僕なら強いかな。
振り返ってみると、ずっと昔からそうだったような気もするけど。
でもこれって、価値観のなかでもかなり根源的な部分のことだと思うから、容易には変わらないんだろうね、たぶん。



坂の途中―おいしいコーヒーのいれ方〈7〉 集英社文庫

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この記事へのコメント

2007年04月21日 15:54
こんにちは☆
ついに『坂の途中・・』まできましたね!
私の本棚にもきれいに並んでます。
両極に揺れる自分が居て。もし、その一人
が弱くて。自分がいないとダメになってし
まう・・・っていったん思い始めたら。。
自分はこうしたい!って気持ちよりも、こ
うしなければ・・という気持ちのほうが前
へ出てしまうものなのですかね。。
いろいろ感想文
2007年04月21日 16:20
凛さん、いつもありがとうございます。
今年の4月は就職して以来最高と言っていいくらい忙しかったんですが、人生最速のペースで本を読んでいます。
途中体調を崩し、点滴まで受けたのですがその時病院のベッドで思ったことは、「これでゆっくり本が読める」でした。ほとんどもう中毒を通り越して、病的です。
最初は、ほのぼのとした恋愛ドタバタ劇でしたけれど、人間のかなりディープな部分までえぐった作品になってきましたね。
もう少しで「優しい秘密」も読み終わりますので、考えがまとまり次第すぐに感想をアップします。
気づいたことがあったら、またコメントをお願いします。

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