「人魚の眠る家」を観て

駆けつけた警察官を前に、篠原涼子が脳死で動かない娘の胸に包丁を突き立て叫ぶシーンがとても印象的。


親として、どの時点で子供が死んだと認めなければいけないのだろうか。


ぼくにはまだ、自分の臓器も子供の臓器も提供するかどうか判断がつけられずにいる。


そもそもどの状態なら死んでいるか、または生きているかの基準は、法律で決めるものなのだろうか。


生か死の判定は科学(生物学)の領域の話ではないのか。


科学で判定すべきものを法律で基準を定めようとするから、思いや感情が入り込む余地ができてしまい、難しい問題になってしまうのではないか。


けっして後味が悪い映画ではないけれど、とても重い気持ちにさせられた。


飛躍的に再生医療が進歩しない限り、きっと、ずっとこの議論は続くと思う。


製 作 :2019年 日本

原 作 :東野圭吾

監 督 :堤幸彦

キャスト:篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈 他


「人間失格と3人の女たち」を観て

蜷川実花さんらしいカラフルな演出が各所にあったが、これは賛否が分かれるかも。
個性的な役者ばかりなので人物だけでも十分にカラフルで、それ以上の演出はあまり必要ないと自分は感じた。

史実を基にしたフィクションとは言え、太宰のような男が身近にいたら、同性としては腹立たしい限りだと思う。劇中にも登場する三島由紀夫の気持ちもよくわかる。

そもそも先ず、生きる気力がない。今朝目覚めたらまだ生きていたので、とりあえず今日一日は生きてみることにした、と表現したくなるような気力のなさ。
生きることにまったく執着がないから、誰にでも優しくできるし、お金にも執着しないから取り巻きは常に多く、女性にもよくモテる。
例えは悪いかもしれないけれど、アルプス山脈に飛行機が墜落し、助けが来るまで人肉を食べて生き延びた人の方が、自分は人間として何倍も信用できるし、尊敬もする。
みっともないくらいに一生懸命生きてみろよ、って言いたい。
きっと向こうの世界では、他の魂たちを抑えて、この世に肉体をもって生まれ代わってきたはずなのに。

執着がないから、人間関係が極めて杜撰。
美和子には妻という地位、静子には子供(遺伝子)、自分にはもらうものが何もないと泣いた富栄。
富栄の気持ちは分からないでもないけれど、大切な人にこんなことを考えさせてはいけない。
太宰にとっては、誰が何を考え、感じようがどうでも良かったのかもしれないが。

もっともそういう自分も、10代の後半には熱病のように太宰治を読み耽った。
どの道を進もうとも行き止まり、八方塞がりのような気がして、そんな時に自らの意思で「墜ちていく」太宰の文学は、とても魅力的に思えた。

でも今なら、どちらが前かも分からなくても、とにかく体が向いている方へ少しずつ進んでいけば、今とは違うどこかへ行けることが少しずつ分かってきた。

10代の頃によく考えた、自分が何者か、自分の使命は何か、自分はどこへ向かおうとしているのか、今ではそんなことはどうでもいい。
毎日少しずつでも進んで行けたなら、今日とは少しだけ違うところへ明日は行ける。

今なら太宰にそう教えてあげたい。


監 督 :蜷川実花
キャスト:小栗旬(太宰治)、宮沢りえ(津島美知子)、 沢尻エリカ(太田静子)、 二階堂ふみ(山崎富栄)他


【映画パンフレット】 人間失格 太宰治と3人の女たち 特別版 監督 蜷川実花 キャスト 小栗旬、宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ、成田凌、千葉雄大
【映画パンフレット】 人間失格 太宰治と3人の女たち 特別版 監督 蜷川実花 キャスト 小栗旬、宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ、成田凌、千葉雄大

「天気の子」を観て

ラストの3年後のシーンは必要かどうか賛否が分かれると思う。

ぼくはどちらかと云うと必要ない派。

でも新海監督は、「君の名は」でもそうであったように、主人公の二人が再会するところまできちんと描いておきたかったんだろうと思う。

加えて云うなら、「天気の子」では東京が水没してしまう未来より、いまこの一人の女性(陽菜)を帆高は選択し、その結果東京は3年間雨が降り続き以前とは全く違った世界になってしまったことを、一つの現実として描いておきたかったんだと思う。

ディズニー映画なら、陽菜を連れ戻し、雨の神かなにかを退治するか仲間にするかして東京の雨も降り止み、すべてが丸く収まってめでたしメデタシ・・・、じゃないだろうか。

監督:新海誠
音楽:RADWIMPS

追伸、近年ではストリートビューなどもあり立体映像等のサンプルを取りやすくなったとは云え、東京の街の再現性は凄いのひとこと。また雨粒の一つひとつまでしっかり描かれていて、映像を観ているだけでも楽しめる。「君の名は」で映画音楽はこりごりだったけど、新海監督から「是非」と頼まれたので引き受けた(らしい)RADWIMPSの音楽も、各処で情感を盛り上げていてとても良いです。