「人間失格と3人の女たち」を観て

蜷川実花さんらしいカラフルな演出が各所にあったが、これは賛否が分かれるかも。
個性的な役者ばかりなので人物だけでも十分にカラフルで、それ以上の演出はあまり必要ないと自分は感じた。

史実を基にしたフィクションとは言え、太宰のような男が身近にいたら、同性としては腹立たしい限りだと思う。劇中にも登場する三島由紀夫の気持ちもよくわかる。

そもそも先ず、生きる気力がない。今朝目覚めたらまだ生きていたので、とりあえず今日一日は生きてみることにした、と表現したくなるような気力のなさ。
生きることにまったく執着がないから、誰にでも優しくできるし、お金にも執着しないから取り巻きは常に多く、女性にもよくモテる。
例えは悪いかもしれないけれど、アルプス山脈に飛行機が墜落し、助けが来るまで人肉を食べて生き延びた人の方が、自分は人間として何倍も信用できるし、尊敬もする。
みっともないくらいに一生懸命生きてみろよ、って言いたい。
きっと向こうの世界では、他の魂たちを抑えて、この世に肉体をもって生まれ代わってきたはずなのに。

執着がないから、人間関係が極めて杜撰。
美和子には妻という地位、静子には子供(遺伝子)、自分にはもらうものが何もないと泣いた富栄。
富栄の気持ちは分からないでもないけれど、大切な人にこんなことを考えさせてはいけない。
太宰にとっては、誰が何を考え、感じようがどうでも良かったのかもしれないが。

もっともそういう自分も、10代の後半には熱病のように太宰治を読み耽った。
どの道を進もうとも行き止まり、八方塞がりのような気がして、そんな時に自らの意思で「墜ちていく」太宰の文学は、とても魅力的に思えた。

でも今なら、どちらが前かも分からなくても、とにかく体が向いている方へ少しずつ進んでいけば、今とは違うどこかへ行けることが少しずつ分かってきた。

10代の頃によく考えた、自分が何者か、自分の使命は何か、自分はどこへ向かおうとしているのか、今ではそんなことはどうでもいい。
毎日少しずつでも進んで行けたなら、今日とは少しだけ違うところへ明日は行ける。

今なら太宰にそう教えてあげたい。


監 督 :蜷川実花
キャスト:小栗旬(太宰治)、宮沢りえ(津島美知子)、 沢尻エリカ(太田静子)、 二階堂ふみ(山崎富栄)他


【映画パンフレット】 人間失格 太宰治と3人の女たち 特別版 監督 蜷川実花 キャスト 小栗旬、宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ、成田凌、千葉雄大
【映画パンフレット】 人間失格 太宰治と3人の女たち 特別版 監督 蜷川実花 キャスト 小栗旬、宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ、成田凌、千葉雄大