『中国行きのスロウ・ボート/村上春樹』を読んで

前半の4作品と後半の3作品では、
明らかに作風が異なっている。

巻頭で村上氏本人が『羊をめぐる冒険』をはさんで
およそ1年近くのブランクがあるとわざわざ断っていることからして、
村上氏自身に大きな心境の変化か、意識の変化が何かあったのだろう。

前半の4作品は、どことなく力みがあるし、若干独りよがりな書き方をしているように感じる。
しかし、後半の3作品は見事に修正されていて、
2008年にリリースされたとしてもまったく違和感がない。

デビュー当時から、それだけ完成度が高かったってことだろうか。

また、僕が村上春樹さんの作品をこんなに読み続けられた理由もこれに因るところが大きいと思うのだけれど、
今回改めて感じさせられたのは、
「村上さんは女性の描き方が抜群に上手い」ということだ。
(文字にしてしまうと、とても陳腐なことのように感じさせてしまうけれど)

すごく清潔に描かれているのに、香るような色気があるというのかな、
それに「強さ」と「はかなさ」「可憐さ」のバランスも絶妙だし、
柔らかさや温かさの象徴のように描かれていないのが特にいいと思う。

以前にエッセイか何かで、
「(村上氏自身は)長編と短編とどっちが好きか、どっちが得意と思っているか」
とよく訊かれて、答えにとても困るといったようなことを読んだことがある。

短編では、いきなり長編ではやれないような実験的な試みを色々試してみて、
ある程度の手応えを感じたら長編でも使ってみる、
あるいは、長編のテーマにはならないんだけれど
電車に乗っているときや、喫茶店でコーヒーを飲んでいるときに
「ふっと」頭をよぎったインスピレーションを形にしておきたかった
と云うようなことを短編にしているのではないかと思う。

だから、氏にとっては、「どっちが自分としては好きか」とか
「どっちが得意か」なんてことはまったく無意味なことなんじゃないだろうか。

読者として訊きたくなる気持ちは、とてもよく理解できるけど。

『走ることについて語るときに僕の語ること』が去年の年末に出たけれど、
僕としては早く小説を出して欲しいな。

ちょっと禁断症状気味だから、
『羊をめぐる冒険』とかから、読み直してみようかな。

中国行きのスロウ・ボート (中公文庫)

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