「緑の午後―おいしいコーヒーのいれ方〈5〉/村山由佳」を読んで

前巻までの流れでは、それぞれの登場人物のキャラクターも安定してきて
巻き起こるドタバタもある程度オチが予想できる中で
そのプロセスでの勝利とかれんの心の動きを
時にはハラハラ・ドキドキしながら
またある時はまどろっこしく感じさせながら
勝利に感情移入させる手法が多くの読者の共感を呼び、
「コメディタッチのほのぼのラブストーリーを書かせたら、
もしかして今の日本では一番上手いかもしれない」と感じて読んでいた。

それこそ寅さん的な安定感を見せ始めていたから
恐れ多くも、もし自分が村山さんの立場だったら、
今のこの安定した展開にあえて大きな変化を加えることは怖さが先に立ってしまって
なかなかこんなに変化を加えられないなあ、
村山さんの意図をしっかり理解して、
読者はちゃんとついてきてくれる互いの信頼感があるからこそ
成し得ることだよなあ、とつくづく感心した。
やっぱり、このあたりが「さすがだなあ」と思う。


ここのところ、勝利君にかなり感情移入してブログを書いていたけど
今回もついでに言わせてもらえば、今回彼は決定的な過ちを最低二つは犯してしまっている。

ひとつめ
意を決して、「星野の気持ちに応えることは出来ない」と伝えたのだから
その後星野がどうなろうと――極端な言い方をすれば、どこでのたれ死のうが、自暴自棄になってドラッグや犯罪に手を染めるようになろうが――
絶対に彼女に優しさの片鱗を見せてはいけない。
それこそ心を鬼にしてでも「絶対に」だ。
このような場合、現実世界では、かなりの高い確率で男は両方の女性から
結果的に見放されることになるのではないか。
「二兎を追うもの」とは少し違うが、結果は同じだと思う。
勝利に「成り行き上、しょうがなかった」とは言わせない。
消極的にしろ、選択出来得る状況にあったし、
事実、分かれ道のどちらか一方を選択したのは彼自身だ。

ふたつめ
摂食障害になりかかった星野を快方に向わせるためとは言え、
年明け早々に意を決して星野に「付き合えない」という自分の意思を伝え
その結果星野は倒れるまでに痩せてしまい、
摂食障害になりかかっているのを自分が「友人として」手助けしていることをかれんにほとんど何も話していない。
「デートじゃない」と思い込もうとまでしている。
後ろ暗いことがなければ、きちんとかれんに話さなければならないし
そうでなければ「絶対にかれんには打ち明けることのない、墓場まで抱えていくこと」として、どんなことがあってもかれんにはしらを切り続ける覚悟が必要だと思う。
一番大切な人は、何時いかなる時でも一番大切にしておかないと
――少なくともその「フリ」ぐらいはしておかないと――遠からずひどい結末が待っている、
というのが40年近く生きてきた中での人生訓だ。


と、今回もかなり感情移入してしまった。

それにしても勝利、力入れるところと抜くところ、間違えてんじゃね~か~、
しらね~ゾ~。


緑の午後―おいしいコーヒーのいれ方〈5〉

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック